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きまぐれ猫本舗

written by 桃様



 本なんかとっくの昔になくなった遥か未来の話です。
 あまり未来過ぎて、猫が古本屋をやっていても誰も不思議に思いません。そんな世界の、 いかにも時代に取り残された風な下町に、『きまぐれ堂』があります。
 一人の客がやって来て店の中を覗くと、主人がいません。替わりに、レジには人間が座って本を読んでいます。客は、「あの〜」と声を掛けます。
 「今日は、いつものご主人は見えないみたいですね」
 「いや、私もね。覗きに来たのですが、誰もいなくてね。しょうがないから、店番を替わりにしているのですよ」
 「しばらく、いいですかね?」客がいいます。
 「いいんじゃないですか」店番が答えます。
 かなり時間がたって、主人が戻ってきます。主人は、自分のお気に入りの場所が誰かに占領されているのをみつけますが、そんなこと気にもならないらしく、とんとんとんと本棚の上に登って、丸くなって寝始めます。
 客たちは、主人が戻ってきたことも気がつかないで、開いた本の世界に浸っています。

 店のはるか上空を、今日も、巨大な宇宙船が飛んで行きます。地球に残ることを拒まれ、強制的に移民をさせられる人々を満載した宇宙移民船です。